MARSHALL The Guv’norはどんなエフェクター?
MARSHALL The Guv’norはどのような特徴を持つエフェクターなのでしょうか?まずは音を聴いてみてください。
①ブリティッシュサウンドを再現するオーバードライブペダル
The Guv’norは、マーシャルのフルスタックアンプ(JCM800など)の歪みをペダル1台で再現する目的で作られました。
②アンプライクな操作性と3バンドEQ搭載
Gain、Bass、Mid、Treble、Levelの5つのノブを搭載しており、アンプのように直感的で幅広い音作りが可能。特に3バンドEQは、当時のペダルとしては珍しく、柔軟なトーン調整を実現しています。
③太くて力強い歪みサウンド
高域がキツすぎず、中域に粘りがあり、ギターソロやパワーコードに存在感を持たせる音が特徴。クランチ〜ハードロックまで対応でき、特に80年代ロックサウンドとの相性は抜群です。
④現在も人気のヴィンテージペダル&復刻モデルも登場
初代は1988年に登場し、今では中古市場でプレミアがつく人気モデル。近年はマーシャルから復刻版も登場し、手に入れやすくなっています。
他のOver Driveとの違いは?

MARSHALL The Guv’norは「オーバードライブペダル」に分類される製品ですが、一般的なOver Drive(特にBOSS OD-1やTube Screamerなど)と比べると、いくつかの明確な違いがあります。以下にその主な相違点を解説します。
①“アンプそのもの”を目指した設計
多くのオーバードライブ(例:BOSS SD-1、Ibanez TS9など)はアンプを軽くプッシュする目的で使われることが多いですが、The Guv’norはJCM800アンプの歪みをそのままペダル化するというコンセプトで設計されています。単体でも完成された「フルレンジな歪み」を出せるのが最大の特徴。
②3バンドEQ搭載でトーンの幅が広い
一般的なオーバードライブはToneノブ1つのシンプルなトーン設計が多い中、The Guv’norはBass / Mid / Trebleの3バンドEQを搭載。よりアンプのように細かく音色を調整できるのが大きな強みです。
③太く重心の低いサウンドキャラクター
TS系のオーバードライブは中域が強く滑らかで、SD-1系はやや鋭いアタックが特徴ですが、The Guv’norは中低域が豊かで、より骨太なサウンド。ローエンドの迫力が欲しい人や、「箱鳴り感」のあるドライブを求める人に好まれます。
④単体でハードロック〜メタル手前までカバーできるゲイン量
TS系はクランチやブースト用途が主ですが、The Guv’norは単体でメインの歪みとして使えるレベルのゲインを持っています。ブースターではなく「主役の歪みペダル」として使える点が異なります。
どんなジャンルに使えるの?

MARSHALL The Guv’norは、その太くて粘りのあるブリティッシュサウンドから、以下のようなジャンルに特に向いています。
①ハードロック
1980年代のJCM800系ハイゲインサウンドに近い歪みが得られるため、骨太で迫力のあるパワーコードやリードギターに最適。
②クラシックロック
オーバードライブ~クランチ程度の歪みも作れるため、70年代のビンテージロックサウンドも再現可能。
③ブルースロック
ゲインを抑えて中域の粘りとニュアンスを活かしたトーンも得意。マーシャル特有の“暴れすぎない”歪みはブルースギタリストにも好まれます。
④パンク・ガレージロック
粗めでエッジのあるドライブが出るため、ラフで勢いのあるサウンドにもぴったり。存在感ある音でバンドサウンドに埋もれません。
⑤オルタナティブ/グランジ
やや暴れる質感の歪みは、90年代以降のグランジ/オルタナ系サウンドにもマッチ。ダークで厚みのある音作りができます。
MARSHALL The Guv’norを使用しているギタリストは?

以下のギタリストはMARSHALL The Guv’norを使用してる、または使用していました。
①ゲイリー・ムーア
ブルース・ハードロック界の名手、ゲイリー・ムーアは力強く情熱的なリードトーンを作るためにThe Guv’norを活用しており、マーシャルアンプと組み合わせて、歌うような粘りのあるサウンドを生み出していました。
②アレックス・ライフソン
プログレッシブ・ロックバンド「Rush」のギタリスト、アレックス・ライフソンもThe Guv’norを使用していたことで知られています。彼の機材構成の中では、歪みの質感を補完する役割として導入され、複雑なアンサンブルの中でもギターの存在感を維持するための一助となっていました。
③ポール・ギルバート
ハードロック・テクニカル系のギタリストとして有名なポール・ギルバートも、このペダルのファンの一人です。彼はインタビューの中で、The Guv’norを「気に入っていたペダルの一つ」として挙げており、自身のソロワークやレッスンなどでも時折使用していたようです。アンプのキャラクターを活かしながらも、さらに音に厚みを加えるために選ばれたペダルといえるでしょう。
④グレアム・コクソン
1990年代のブリットポップシーンを代表するバンド「Blur」のギタリスト、グレアム・コクソンも、The Guv’norを初期のライブやレコーディングで使用していた記録があります。彼はマーシャルらしいドライブサウンドを活かしつつも、ザラついたガレージ風の質感を求める中でこのペダルを選んだようです。歪みがやや荒削りな特性が、Blurの音楽性にも自然に溶け込んでいました。
The Guv’norの各ツマミの機能と役割

ここではMARSHALL The Guv’norの各ツマミについて、初心者にもわかりやすく解説します。The Guv’norは当時としては珍しく、アンプ並みに細かく音作りができるペダルであることが特徴です。
①GAIN
このツマミは、歪みの強さ(歪み量)をコントロールします。左に回すとクランチ寄りの軽い歪みになり、右に回すとサステインが伸びた太く粘りのあるハイゲインサウンドになります。ギターソロやパワーコードを前面に出したいときは、ゲインを高めに設定するのが効果的です。
②BASS
低音域の量を調整するツマミです。右に回すとローエンドが増し、音に厚みや重みが加わります。ただし上げすぎるとモコモコするので注意が必要です。
③MIDDLE
中音域(特にギターの「芯」にあたる部分)を調整します。The Guv’norの音の「粘り」や「前に出る感じ」は、このミドルの調整によって大きく変わります。ソロやリフを際立たせたいなら、やや強めに設定すると効果的です。
④TREBLE
高音域を調整するツマミで、音の輪郭や抜けの良さに関わります。上げるとシャープで明るいサウンドになりますが、上げすぎると耳に刺さる音になることもあります。バンド内で「音抜け」が欲しいときはこのツマミがポイントになります。
⑤LEVEL
全体の音量(出力レベル)を調整します。他のペダルやアンプとのバランスを取るためのツマミで、Gainとは独立して動作します。ブースター的に使う場合はLevelを高めに、メインの歪みペダルとして使う場合はアンプとのバランスを見て調整しましょう。
The Guv’norの用途別セッティング例

ここではMARSHALL The Guv’norの用途別セッティング例を、ジャンルや演奏スタイルごとに解説します。The Guv’norはアンプライクな特性と柔軟なトーン調整が魅力なので、セッティングによってかなり幅広い使い方が可能です。
①クラシックロック系クランチ
このセッティングは、軽めのクランチからやや荒々しいリズムサウンドに向いています。ミドルとトレブルを少し強調することで、ビンテージマーシャルアンプのようなジャキッとした輪郭を再現できます。
Gain | 10〜11時 |
Bass | 12時 |
Middle | 1〜2時 |
Treble | 1時 |
Level | 12〜1時 |
②80年代ハードロック/メタル風ディストーション
この設定では、The Guv’norの粘りと太さを最大限に活かしたハイゲイン・ドライブが得られます。ゲインを上げすぎるとノイズも出やすいので、ノイズゲートの併用やピッキングのコントロールも意識しましょう。
Gain | 3時〜フル |
Bass | 2時 |
Middle | 2〜3時 |
Treble | 1時 |
Level | 1時 |
③ブルースロック系の歌うリード
このセッティングは粘りとニュアンス重視のソロプレイに適しています。ミドルを強調し、トレブルを少し抑えることで、耳に刺さらず、暖かく歌うようなトーンになります。
Gain | 1〜2時 |
Bass | 1時 |
Middle | 2時 |
Treble | 11〜12時 |
Level | 12〜1時 |
④パンク/ガレージ系のラフな歪み
音の「暴れ感」や「生っぽさ」を出すには、やや過激なトレブルと高めのゲインが効果的。低音を抑えて、ジャキジャキとしたアグレッシブな音像を作ります。コードをガシガシ弾くスタイルと相性抜群です。
Gain | 2時〜3時 |
Bass | 11時 |
Middle | 1時 |
Treble | 2時 |
Level | 1〜2時 |
⑤アンプブースター的な使い方
ゲインは控えめにして、Levelを上げることでアンプをプッシュします。特にチューブアンプと組み合わせた場合、ナチュラルな倍音とコンプレッションが得られ、音に存在感と艶が加わるのが特徴です。
Gain | 9〜10時 |
Bass | 12時 |
Middle | 12〜1時 |
Treble | 12時 |
Level | 3時 |
トランジスタアンプの場合は、中域をしっかり出すと音の「抜け」が良くなりますが、チューブアンプの場合はゲイン控えめ+Level高めで「プッシュ感」を活かすと良いでしょう。また、シングルコイルPUの場合は、トレブル控えめ+ベース少し上げで、ハムバッカーPUの場合は、トレブル強め+中域カットしすぎないような設定にすると良いでしょう。
The Guv’norに似ているエフェクターは?
The Guv’norは「マーシャルアンプのような歪み」を再現した元祖的ペダルであり、その設計思想を引き継いだり影響を受けたりしたモデルがいくつも存在します。
①MARSHALL Drivemaster

The Guv’norの後継モデルとして1990年代初頭に登場。内部回路はThe Guv’norとよく似ていますが、サイズがコンパクト化され、ノイズ耐性もやや向上しています。音のキャラクターはThe Guv’norとほぼ同系統で、ミドルに粘りがあるブリティッシュ・ドライブが魅力。The Guv’norよりも若干タイトな印象です。
②MARSHALL Shredmaster

出典:MARSHALL
こちらもDrivemasterと同時期に登場した兄弟モデルで、よりハイゲインなディストーションサウンドを狙った設計。The Guv’norの音を基礎にしつつ、モダンなハードロック/メタル向けに仕上げられています。ミドルの効きが良く、音抜けも上々。Radioheadのジョニー・グリーンウッドなども使用していたことで知られています。
③JHS Pedals Charlie Brown V4

アメリカのJHS Pedalsが出している「Charlie Brown V4」は、The Guv’norに強く影響を受けた現代版オーバードライブです。特にマーシャルJTM45系アンプのようなウォームで立体的な歪みが特徴。ミッドレンジの表現力や、ボリューム操作への追従性など、The Guv’norの良さをモダンに再設計したようなサウンドです。
④Mooer Black Secret

MooerやJoyoといった中華系ブランドからも、The Guv’nor系のペダルがいくつか出ています。たとえばMooerの「Black Secret」や「Cruncher」などは、安価ながらマーシャル風の歪みを再現することを目的とした設計になっており、ミドルが太く、やや粗削りな歪みが特徴です。コストを抑えたい人向けとして人気があります。