ZO-3は日本のギターメーカー、FERNANDES社(フェルナンデス社)から1990年に発売されたアンプスピーカー内蔵式のミニギターです。ギター本体にアンプが内蔵されているのが特徴で、外部のアンプに接続しなくても本体だけである程度の音量で演奏ができるようになっています。そのため、気軽に持ち歩けるギターとしても世界中から愛されています。今回はそんなZO-3について紹介していきたいと思います。
ZO-3ギターの特徴
ZO-3ギターの特徴を紹介します。
①おもちゃのような見た目なのに本格的なギター
FERNANDES ZO-3(通称「ゾウさん」)は、持ち運びに便利なミニギターの代表的存在で、その名前の通り象のような形状をしています。見た目はおもちゃのようでもありますが、実際にはしっかりした作りで優れた性能を持つギターです。
②内蔵アンプでどこでも音が鳴らせる
ZO-3の最大の特徴は、内蔵されたアンプとスピーカーです。これにより、いつでもどこでも手軽に音を出すことができます。音としては室内練習には十分なボリュームのクリーンサウンドです。
③扱いやすく持ち運びも楽
通常のエレキギターと比べてコンパクトなサイズなので、女性や子どもにも扱いやすく、持ち運びも楽なのでさまざまなレクリエーションシーンで活躍します。最初のモデルは1990年に発売され、そのポップなデザインと手軽さから、ヒット商品となりました。現在では、限定版やコラボレーションモデルを含むさまざまなバリエーションが存在しています。
ZO-3ギターの仕様
ZO-3の基本的な仕様を解説します。
ZO-3のサイズ・質量等
ボディ幅 | 233mm |
長さ | 860mm |
厚さ | 57mm |
質量 | 2.7Kg程度 |
スケール長 | 609mm |
フレット数 | 22 |
ネック材質 | メープル |
ネックジョイント | ボルトオン |
アウトプット | ギターアンプ接続用のアウトプット・ジャック×1、 ヘッドフォン用のステレオ・ミニジャック×1 |
※種類によって多少の違いがあります
ストラトキャスターの3.2~3.8kgに比べると、かなりの軽量設計で、持ち運びがとにかく楽です。
スケールは、弦の長さが短いショートスケールが採用されており、弦のテンションが弱いため楽に押弦できます。フレットの間隔も短く、手の小さい女性や子どもにも扱いやすい幅になっています。ただ、テンションが弱いとチューニングが安定しにくいといったデメリットもあるため、激しい演奏やチョーキングを多用するような演奏の場合には注意しましょう。
また、一般的にミニギターと呼ばれるギターの場合はスケール長は520mm程度ですが、それよりも長いのも特徴です。つまり一般的なエレキギターよりも短く、一般的なミニギターよりは長い、という絶妙な長さとなっています。これにより、弦のテンションは多少ルーズではありますが、一般的なエレキギターとかなり近い感覚で使用することができます。
ボディはアンプ内蔵の分だけ一般的なエレキギターより厚みがありますが、ギターを弾くときには支障はありません。
ZO-3のピックアップ
種類によって異なりますが、ノーマルモデルのZO-3にはハムバッカーが1つ搭載されています。ハムバッカーなので、パワーがありノイズも抑えられます。
ZO-3の内蔵スピーカー
9V電池で動くアンプスピーカーを内蔵しています。メーカーが試行錯誤し改良されているようですが、ポータブルモデルで軽いので、音はそこまで良くないです。より良い音を出したい場合は外部のアンプスピーカーに接続しましょう。
ZO-3の弦
ZO-3ギターの弦は専用のものが発売されています。通常の010-046の弦でも十分対応できますが、通常の弦をZO-3に仕様すると、テンションがやや緩くなります。
ZO-3のストラップ
ZO-3にはストラップも付けることができます。
ZO-3ギターのケース
ZO-3には付属のソフトケースが付いていますが、付属のソフトケースはクッションが入っていないため、物にぶつかるとギターにダメージを与えてしまう可能性もあります。専用のハードケースも発売されているので、使用すればより安全に持ち運ぶことができます。
ZO-3ギターは初心者向け?
ZO-3ギターは、旅行などの際に持ち運んで楽しむことができる、非常に遊び心のあるギターです。特に限られた設備での演奏時に便利です。宴会やエンターテイメント用途に最適ですし、ふと思いついたメロディやアイデアをその場で弾いて、スマートフォンで録音したりと色々なかたちで使用できます。
しかし、初心者にとっては最初の1本としてはおすすめできません。その理由は、ZO3のボディが小さく、ショートスケール(弦の長さが短い)でフレット数が制限されているため、慣れてしまうと通常のサイズのギターに移行する際に適応が難しいからです。ZO-3で演奏できても、通常のサイズのギターで演奏する時は、少し違う感覚に慣れる必要があります。
初心者がギターを始める際には、まず通常のスケールのギターからスタートし、ZO-3は基本的なスキルを習得してから購入するのが良いでしょう。通常のギターを所有している人が自宅練習やイベント用として、購入するのをオススメします。
子ども用ギターとしてもオススメできる
初心者にとってZO-3ギターは適していないと解説しましたが、子ども用ギターとしてはどうでしょうか?
子どもの体格は大人と異なるため、子ども用のギターには楽器のサイズや重さなど、さまざまな要因が考慮されます。基本的には、ミディアムやショートスケールのもので、弦の高さが低く、指で押さえやすいものがおすすめされます。この点で、ZO-3ギターは子ども用ギターとして良い選択肢であると言えます。
また、アンプが内蔵されており、子どもたちは気軽に楽器で遊びながらスキルを向上させることができます。
子どもがZO-3でギターで楽しむことができ、興味を持って続けるようであれば、その後、子どもの成長に合わせて通常サイズのギターを購入するのが良いでしょう。
自宅での練習用ギターとしてもオススメ
エレキギターの練習において、アンプを使用して練習した方が上達できると言われます。エレキギターの生音による練習ももちろん有効ですが、生音だけでの練習を続けると、ミュートや音の強弱の調整が難しく、上達に時間がかかることがあります。
ZO-3には内蔵アンプが備わっているため、手軽にどこでもアンプから音を出して練習することができます。さらに、イヤホンジャックも搭載されているため、夜間など音を出せない環境でも練習が可能です。
自宅でギターを練習する場合、重いギターを取り出して、アンプを取り出して接続して…、とある程度意気込みが必要になり、こういった手間がかかると練習を諦めがちになることがあります。
その点、ZO-3ギターは、手に取ってそのまま演奏できるので練習頻度が高くなります。ZO-3はミニギターではあるものの、おもちゃのような品質ではなく、信頼できるメーカーが提供する本格的なピックアップやアンプを搭載したミニギターであり、こうした特徴からもZO-3ギターは自宅練習用ギターとしても非常に優れていると言えるでしょう。
ZO-3ギターのメリットとデメリット
ここではZO-3のメリットとデメリットを解説します。
ZO-3のメリット
①遊び心のあるデザイン
遊び心のあるポップなデザインはインテリアとしても面白く、レクリエーションとしても盛り上がります。
②家でも外でもどこでも演奏できる
上で解説したように、演奏シーンを選びません。
③手軽にアンプを通した練習ができる
練習用ギターとしても優れています。
④ネックが細く、手が小さい人でも弾きやすい
手が小さくて通常のギターが弾きにくい人は検討してみてもいいかもしれません。
⑤小型なので子どもや女性でも楽に持てる
特に子どもが音楽に触れる機会を持つというのは大事なことかもしれません。
⑥持ち運びもにも便利
旅行にも宴会にも持って行けます。
⑦エフェクターを接続できる
小型ですが本格的なギターなので、エフェクターの接続もできます。表現の幅が広がるので、さらに色々な使い方ができます。
ZO-3のデメリット
①座るとやや弾きづらい
ZO-3ギターを座って演奏しようとすると、ボディが軽いゆえに一般的なギターを弾くよりもネックが下がりやすいです。また、座って弾くと、1弦から足のももまでの距離が短いので、速いカッティングのとき右手のダウン・ストロークが足に当たってしまうこともあります。こうした問題はストラップを掛ければ解決します。ストラトやセミアコなどのエレキギターと比べると弾きにくい部分は確かにありますが、そこまで問題はなくギターとしては普通に弾くことはできます。
②電池駆動なので長時間の演奏はできない
駆動に関しては、ZO-3シリーズのほとんどは9V電池での駆動となるため、演奏時間は大体2時間程度となります。
③通常のスケールのギターが弾きにくく感じる可能性もある
ショートスケールに慣れてしまうと通常のスケールのギターが弾きにくく感じる可能性もある、といったデメリットもあります。
④内蔵アンプスピーカーのみでは音が小さいのでバンドでは使用できない
内蔵アンプはそれなりの音量まで出すことはできるものの、バンド演奏で使用するには音が小さいです。バンド演奏にZO-3ギターを使用する場合は外部のアンプを使用しましょう。
ZO-3ギターのメンテナンス
ZO3ギターのメンテナンスは通常のエレキギターと同じ手順です。演奏後、ギタークロスを使用してネックやボディーを拭く程度で十分です。また、弦は演奏後に汗や汚れをきちんと拭くと寿命が延びます。
ZO3ギターの特徴として、ネックは比較的短いため、反りにくいですが、フレットは4〜5年の演奏後には摩耗することがあります。配線の問題やフレットの摩耗が生じた場合、通常のエレキギターと同様にリペア(修理)を専門の楽器店で行うことをおすすめします。ほとんどの楽器店で修理サービスを提供しています。フェルナンデスの場合、公式サイトを通じて問い合わせをすることもできますので、そちらも検討してみてください。
ZO-3ギターの種類
ZO-3は発売されてから30年以上も経っている人気シリーズなので、バリエーションも豊富です。そんなZO-3のバリエーションを紹介していきます。
ZO-3(ノーマルモデル)
1990年の発売当時からほとんど変わることなく発売され続けているノーマルモデルのZO-3です。ボリュームを上げればすぐに音が出るお手軽さが人気です。製造された年代によって、音質や基盤回路、電池ボックスの変更など細かい改良が行われてきましたが、基本的な部分は変わっていません。
後述する「ZO-3 芸達者」のようにOUTジャックがセンド・リターン構造にはなっていないので、外部エフェクターの音を内蔵アンプスピーカーから出すことはできません。もしZO3ギターで歪ませたい場合にはオーバードライブなどのエフェクターを接続し外部ギターアンプから音を鳴らすことで、歪ませたサウンドを鳴らすことができます。
ZO-3 芸達者
通常のZO-3にトレモロアームとディストーションを搭載したモデル。歪んだ音やアーミングにより幅の広いプレイに対応できます。アームにはビンテージタイプのストラトのような6点スタッドではなく左右2点式のスタッドが採用されているため、アームをガンガン使ってもチューニングが狂いにくい設計になっています。ただしディストーションはさほど激しい歪みではありません。
また、OUTジャックがセンド・リターン構造となっているため、外部エフェクターを通した音を、内部アンプスピーカーで鳴らすことができます。そのためリバーブやディレイといったエフェクターを接続すれば、外部のアンプを用意しなくてもエフェクトがかかった音で演奏することができます(接続には付属のY型ケーブルを使用します)。
ノーマルモデルのZO-3よりも多機能な分、価格も高いモデルです。
ZO-3ST
ピックガード付きでストラトキャスターをイメージしたモデルです。ピックアップには、シングルサイズのハムバッカー「TB-3」が搭載されています。また、「ZO-3 芸達者」と同じくミニスイッチでディストーションモードに切り替えることができます。
DIGI-ZO(デジゾー)
1998年にFERNANDES社の30周年記念として発売された、マルチエフェクターとチューナーを内蔵したモデルです。マルチエフェクターを搭載したことによって、プレイの幅がさらに広がるものの、電池の消費量が多くなり稼働できる時間は短くなっています。そのため、DIGI-ZOには専用のACアダプターが付属していました。もし中古で購入する場合は専用ACアダプターが付いているものを買いましょう。
※DIGI-ZOは現在は生産終了、販売されていません。
DIGI-ZO HYPER(デジゾー ハイパー)
DIGI-ZOの後継機種で、内蔵されているエフェクターがDigi Tech社(デジテック社)と共同開発したマルチエフェクターなっています。また、チューナーの他にリズムマシーンを搭載しています。DIGI-ZO同様、電池持ちは悪いので、こちらも中古で買う場合は専用ACアダプター付属のものを買いましょう。
DIGI-ZO ULT(デジゾー ウルティマ)
2004年に発売されたZO-3の最上位機種です。通常のZO-3と違い、レスポールやSGと同じミディアムスケールとなっています。ボディも通常のZO-3より大きめに作られています。また、内蔵スピーカーにはFostex製スピーカーが搭載されており、通常のZO-3よりも大音量で迫力のあるサウンドを鳴らすことができます。DIGI-ZO HYPERと同じく、Digi Tech社(デジテック社)と共同開発したマルチエフェクターとチューナー、リズムマシーンも搭載しています。アンプモデリングも搭載されています。
※DIGI-ZO ULTは現在生産終了しています。
ZO-7 7Strings
7弦仕様のZO-3、ということでZO-7です。7弦のためボディーが大きく、ネックもミディアムスケールになっています。
ZO-3 キャラクターシリーズ
歴史の長いZO-3は、今まで多くのコラボモデルが発売されてきました。hide、ハローキティ、リラックマ、、、など、アーティストからキャラクターまで様々なコラボモデルが作られています。
ZO-3 BASS
ZO-3のベースバージョンです。以前は『PIE-ZO』という名称でピエゾピックアップ搭載モデルが発売されていましたが、現在では『ZO-3 BASS』として、マグネティックピックアップを搭載し、TONESノブが追加されたモデルが販売されています。ZO-3ギターとセッションすると楽しいです。
まとめ
通常のギターにはありえない様々な状況に対応できる手軽さがZO-3の魅力です。お気に入りのギターで練習をするのは大事ですが、演奏が難しいと感じた場合やもっと練習する時間が欲しい時にはZO-3ギターを試すこともおすすめです。また、どこでも気軽に演奏できる便利さから、2本目や3本目のギターとして購入する人も多いです。ZO-3ギターで、新しいギターライフをお楽しみください!