ハイエンドギタープロセッサーの代表格Axe-Fx。その最新モデル(2024年時点)であるAxe-Fx III MARK II TURBOをレビューしていきます。
強化されたCPU性能、最新のアンプモデリング技術、数千のUltraResスピーカーキャビネットシミュレーション、多彩なエフェクト、そして広範な入出力オプションを備えたこのモデルは、プロフェッショナルなギタリストからアマチュアまで、すべてのプレイヤーにとって理想的なツールです。
実際に使用してみてレビューなので、良い点も悪い点も含めて詳しく見ていきましょう。
- そもそもギタープロセッサーってなに?
- Axe-Fx III MARK II TURBOはどんな機材なの?
- Axe-Fx III MARK II TURBO独自の機能は?
- Axe-Fx IIとAxe-Fx IIIの違いは?
- Axe-Fx IIIにはどんなバージョンがある?
- Axe-Fx IIIとAxe-Fx III MARK IIの違いは?
- Axe-Fx III MARK IIとAxe-Fx III MARK II TURBOの違いは?
- Axe-FxとKemperの違いは?
- ライブでのおすすめのセッティングは?
- Axe-Fx III MARK II TURBOを実際使ってみた感想
- Axe-Fx専用フットスイッチは必要?
そもそもギタープロセッサーってなに?
ギタープロセッサーは、さまざまなエフェクトやアンプシミュレーションを追加するための機材です。具体的には、アンプシミュレーション、エフェクト、キャビネットシミュレーション、ルーティング…などの機能があります。今やギタープロセッサーはスタジオレコーディングやライブパフォーマンスで幅広く利用されています。
より詳しく知りたい方は↓の記事をご覧ください。
Axe-Fx III MARK II TURBOはどんな機材なの?
Fractal Audio Systemの初代Axe-Fxは、2006年に“トッププロも使用できる世界初のモデリングアンプ”として発表されました。初代Axe-Fxはジャンルやプレイスタイルを問わず、世界中のミュージシャンから高く評価され、巨大なギターサウンドシステムをコンパクトな2Uラックに収めることにより、ライブやレコーディングなど、エレキギターに関するあらゆる環境に革命をもたらしました。
それから2011年のAxe-Fx II、2018年のAxe-Fx III、2020年のAxe-Fx III MARK II、2022年のAxe-Fx III MARK II TURBOと、各モデルはCPU性能を強化し、時代のニーズに応える新機能を搭載して進化してきました。この進化により、移り変わりの激しいミュージックシーンで、ギタリストの高度なサウンドメイクに応え続けています。
こうしたことからMETALLICA、STEVE VAI、JOHN MAYER、SUGIZO、HISASHIなど、国内外のトップアーティストも愛用しています。すべてのギタリストにワンランク上のサウンドを提供するアイテムと言ってもよいでしょう。
Axe-Fx III MARK II TURBO独自の機能は?
Axe-Fx III Mark II Turboは音が高品質なだけではなく、いくつかの独自の機能があることも特徴です。これらの機能は基本的な音質には大きく影響しませんが、サウンドメイクの利便性を高め、音をギタリストの好みに近づけていく作業がやりやすくなります。
Tone Match
特定のアンプやトーンの音質特性をキャプチャして再現する技術です。特定のアンプサウンドの再現や、好きなアーティストのトーンの再現に便利な機能と言えるでしょう。ただし、これはあくまでもEQ成分の取り込みであり、Kemperのように歪みやエフェクト成分を取り込む機能ではありません。
Scene
プリセット内で異なるエフェクト設定やパラメータを瞬時に切り替えるための機能です。これにより、ライブパフォーマンスやレコーディング中に迅速かつシームレスに異なるサウンドを使用することができます。プリセット切り替え時に発生するレベル差などの問題を解決することができます。
Channel
Channel機能は、ユーザーが各ブロック(アンプ、キャビネット、エフェクトなど)に複数の設定を保存し、それらをシームレスに切り替えることができる強力な機能です。この機能を使うことで、ギタリストは一つのプリセット内で多彩なサウンドバリエーションを簡単に実現できます。例えば、クリーンサウンド、クランチ、ハイゲイン、リードトーンなどを一つのプリセット内で簡単に切り替えることができます。
Impuls Responce
スピーカーキャビネットやマイクの特性を精密にキャプチャして再現する技術です。これにより、特定のキャビネットやマイクのサウンド特性をデジタル的に再現することができます。
Axe-Fx IIとAxe-Fx IIIの違いは?
Axe-FxIIの時点ですでに十分評価が高かったモデルなので、「これ以上何が変わったの?」 という疑問に思っている方も多いと思います。ここでは主な変更点を解説します。
①DSPが強力になった
Axe-Fx IIではAnalog Devices社のTigerSHARC DSPを搭載していましたが、Axe-Fx IIIではTexas Instruments製のKeyStone DSPを採用し、2倍以上の処理能力向上を実現しています。この強化されたDSPのおかげで、より複雑なセッティングが可能になっています。
②大型ディスプレイの採用
Axe-Fx IIIでは、カラーで大型のディスプレイを搭載しています。800×480の大型IPSカラーディスプレイは従来モデルの30倍の解像度で、明るさとコントラストも向上しているため、音作りのための操作がやりやすくなっています。
③アンプモデリングの改善
新しいアンプモデリングのアルゴリズムが導入され、よりリアルでダイナミックなアンプサウンドを再現できるようになりました。特にクリーンからクランチ、ディストーションまでの幅広いトーンをカバーする能力が向上しています。
④IRサポートの追加
Axe-Fx IIIでは、Impulse Response(IR)ファイルの直接インポートが可能になりました。これにより、ユーザーは自分好みのキャビネットやマイクのサウンドをシミュレートすることができます。
⑤拡張されたエフェクト
エフェクトセクションが拡張され、より多彩なエフェクト処理が可能になりました。また、エフェクトのパラメーターの調整が細かくなり、より精密な音作りが可能です。
⑥入出力が2系統から4系統に増えた
Axe-Fx IIIでは入出力が2系統から4系統に増えたことで、ライブなどでの利便性が大幅に向上しました。以前はメイン出力からPAに回線を送りつつステージ上の自分のアンプにつなぐ、というところまでしかできませんでしたが、新たに追加された出力端子を使い、別のエフェクターやアンプに接続できるようになりました。これにより、より複雑なサウンド設定やPAでのミキシングが可能になりました。
⑦レイテンシーがより小さくなった
Axe-Fx IIIでは音の速さ、つまりレイテンシーが大幅に改善されています。Axe-Fx IIでもレイテンシーは気にならないレベルでしたが、Axe-Fx IIIではより小さなレイテンシーとなっているため、演奏しやすくなっています。
⑧サイズが大きくなった
Axe-Fx IIは2U(ユニット)サイズでしたが、Axe-Fx IIIは3Uサイズとなっています。重量も2kg以上重くなっています。
Axe-Fx IIIにはどんなバージョンがある?
Axe-Fx IIIには3つのバージョンがあります。
1.初代AXE-FX3
2.AXE-FX3 MARK II
3.AXE-FX3 MARK II TURBO
現在、新品で手に入るのはMARK IIとMARK II TURBOのみです。高音質であればシンプルな構成でよい、という人はMARK IIを、より複雑なシステムを組みたい人はTURBOが適しています。
Axe-Fx IIIとAxe-Fx III MARK IIの違いは?
AXE-FX IIIとAXE-FX III MARK IIの主な違いは以下の点です。
①処理能力が向上している
Axe-Fx III MARK IIは、より強力な処理能力を持ち、音質やエフェクトの処理が向上しています。これにより、より複雑なサウンド設定やプロセッシングが可能になります。
②一部のFullRes IRをサポートしている
Axe-Fx III MARK IIでは、一部ではあるもののFullRes Impulse Response(IR)をサポートしており、さらに高精細なキャビネットシミュレーションが可能です。
Axe-Fx III MARK IIとAxe-Fx III MARK II TURBOの違いは?
Axe-Fx III MARK IIとAxe-Fx III MARK II TURBOの主な違いは以下の点です。
①処理能力がさらに向上している
Axe-Fx III MARK II TURBOは、「TURBO」と言うだけあり処理速度が速く、これにより、さらに複雑なエフェクト処理やサウンド設定が可能になります。クオリティの高いエフェクターを使い放題ということです。
②FullRes IRを完全サポートしている
Axe-Fx III MARK II TURBOでは、FullRes Impulse Response(IR)を完全にサポートしています。これにより、最も高品質なキャビネットシミュレーションが可能です。
Axe-FxとKemperの違いは?
Axe-FxとKemperは同じ価格帯でよく比較されますが、全く異なるアプローチの機材です。Axe-Fxはモデリング技術を用いてソフトウェア的にサウンドを生成するのに対し、Kemperは実際のアンプの特性をコピーするプロファイリング技術を基にしています。そのため、Axe-Fxは内蔵モデルのみ使用できますが、Kemperはどんなアンプでもプロファイリング可能です。
どちらも良い音を出せますが、Axe-Fxは細かく音作りでき、Kemperは自身のアンプを再現するのに適しています。Axe-Fxの方が設定項目が多く、細かい設定が可能な分、使いこなすには慣れが必要です。
ユーザーは細かい設定を全て行う必要はなく、プリセットを活用して簡単に良い音を作ることもできます。Axe-Fxは特に音作りに拘るマニア向けで、設定を深く楽しみたいギタリストにとって魅力的です。
Kemperをより詳しく知りたい方は↓の記事がおすすめです。
ライブでのおすすめのセッティングは?
プロユーザーはAxe-Fxを多様な方法で使用しています。直接PAに送る、イヤモニでラインの音を聞く、PAとは別にアンプを鳴らす、プリアンプとしてパワーアンプを鳴らしてマイクで拾うなど、セッティングはさまざまです。中でもライン出力を利用するユーザーが多いのは、自分が作った音をそのまま出せるという利点があり、PAエンジニアや環境に依存しないためです。これはAxe-Fxをライブで使う大きなメリットの一つです。
Axe-Fx III MARK II TURBOを実際使ってみた感想
ここでは、実際にAxe-Fx III Mark II TURBOを使用してみて感じた、メリットとデメリットを書いていきます。
Axe-Fxを使うメリットは?
Axe-Fx III MARK II TURBOを使うメリットを説明します。
①他社製品と比べて、圧倒的なサウンドクオリティー
Axe-Fx III MARK II TURBOは、旧型モデルの高評価を受け継ぎつつ、さらに強化されたサウンドを提供します。演奏者のニュアンスを忠実に再現し、デジタル機器特有の音質劣化を排除しています。特にライン出力ではその効果が顕著で、他ブランドを圧倒するクオリティです。
アンプモデリングは実機の雰囲気を保ちながらHI-FIでクリアなサウンドを実現しています。これは他社製品にはない特徴で、非常に気持ちよく演奏できます。Axe-Fxはアンプの挙動をそのまま再現するため、どんなセッティングでも実機と同じように動作し、「エフェクター」や「シミュレーター」ではなく「アンプ」として使用できます。このリアルな弾き心地が多くのユーザーに支持されています。
真空管アンプの「汚い」部分も再現することで、リアルな演奏感を提供していますが、Kemperなどの他社製アンプモデリングに比べると、サウンドの方向性としては、癖の少ない「綺麗な優等生サウンド」と感じました。
②設定の自由度が高く理想のサウンドシステムを実現できる
Axe-Fx III MARK II TURBOはレイアウトの自由度も高く、複数のエフェクトやアンプを組み合わせたセットアップが可能です。これにより、理想のシステムを構築したり、プロアーティストのライブセットを再現したりすることができます。
ここがAxe-Fx III MARK II TURBOは単なるマルチエフェクターではなく、アンプやその他機材を含むトータルな「サウンドシステム」として開発されているところでもあり、豊富な機材から無限のサウンドバリエーションを作り出すことができます。
③アンプサウンドのカスタマイズが可能
Axe-Fx III MARK II TURBOは、お気に入りのアンプサウンドに満足していても、さらに理想のサウンドを追求できます。プリアンプやパワーアンプのカスタマイズ、豊富なキャビネットシミュレーターが搭載されており、真空管の種類変更やスピーカーの個別設定など、実機では難しいセッティングも簡単に実行可能です。デジタルだからこそ実現するこれらの機能性と高次元での再現力は、Axe-Fx III MARK II TURBOの大きな強みです。
Axe-Fx III MARK II TURBOを使うデメリットは?
逆にAxe-Fx III MARK II TURBOを使うデメリット何でしょうか?非常に高機能な機材ですが、それゆえのデメリットもあります。
①機能が多すぎて使いにくい
実機のアンプやエフェクターを使うよりも、設定できる機能が多く、逆に音作りがしにくいと感じる人も多いと思います。ただ、テキトーにアンプやエフェクターを選んで、デフォルトの設定で使うだけでも十分良い音はするので、最初は自分の理解できるパラメーターだけ調整して使う、というのがおすすめです。
②設定画面が見にくい、わかりにくい
好みにもよる部分かもしれませんが、Axe-Fx III MARK II TURBOの設定画面は、多機能ゆえに情報が詰め込まれており、初めて使用するユーザーや設定に不慣れなユーザーには見にくいと感じられることがありそうです。多数のパラメータやオプションが一度に表示されるため、目的の設定を見つけるのが難しいです。機能がシンプルな他社製品の方が、設定画面はわかりやすいと感じました。
③重い
他社製品と比較すると、Axe-Fx III MARK II TURBOはその高機能性ゆえに重量が増加していることがわかります。他のモデルやメーカーの機器は、軽量化を重視している場合が多く、携帯性を優先しています。しかし、Axe-Fx III MARK II TURBOは、その重量を犠牲にしてでも、最高のサウンドと性能を提供することを目指しています。例えば、高性能なDSPチップ、堅牢なシャーシ、耐久性のあるコネクターなど、すべての部品が厳選されています。また、高性能なプロセッサを搭載しているため、適切な冷却システムが必要であり、冷却ファンやヒートシンクなどの追加装備が、重量の増加につながっています。
ただ、もう少し軽い他社製品もあるので、電車移動が多いギタリストはそういった製品を選んだ方がいいのかもしれません。
Axe-Fx専用フットスイッチは必要?
専用フットコントローラーでなくてもMIDIコントローラーであればAxe-Fxの操作はできますが、Axe-Fxの純正フットコントローラーであるFC-6は、接続するだけで簡単に使えます。面倒な設定が不必要なこの手軽さはかなり嬉しいところ。細かい部分も、Axe-Editを使い簡単に設定が可能です。スイッチが6個では足りない人には、12個のスイッチがあるFC-12が用意されています。
また、純正ペダルにはEV-1とEV-2があり、スペースに余裕があるなら安定感のある大きい方のEV-1がおすすめです。省スペースを重視する人にはEV-2が適しています。