フェンダー社のエレキギター「テレキャスター」は、シンプルなフォルムと使い勝手の良さからさまざまなジャンルのギタリストに愛用されています。似たモデルも各メーカーから販売され、独創的な魅力を持っています。
この記事ではテレキャスターの基本仕様や音の特徴、おすすめモデルなどを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
テレキャスターとは?
テレキャスターは、アメリカのギターメーカーである「フェンダー社」が1950年に発表したエレキギターであり、そのシンプルなデザインと独自のサウンドで一貫して人気を誇るエレキギターです。
様々なモデルが存在し、手頃な価格から高級モデルまで幅広く展開されています。その歴史は長く、ストラトキャスターやレスポールよりも早く登場し、現在もなお進化を続けています。
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テレキャスターの歴史
テレキャスターは1950年にFender社によって「Esquire(エクスワイヤー)」として初登場し、後に「Broadcaster(ブロードキャスター)」、「Nocaster(ノーキャスター)」、そして「Telecaster(テレキャスター)」と名前を変えながら進化しました。
ソリッドボディのエレキギターとしては先行するモデルがありましたが、テレキャスターは斬新なデザインと独自の機能でエレキギター市場に革新をもたらしました。
ヘッドと平行なネック、ワンピースネック、デタッチャブルネック構造、鉄のプレートにまとめた電気回路などがその特徴で、これらの設計は後のギター製造に大きな影響を与えました。まさしく「現代的なエレキギターの元祖」とも言える存在です。
テレキャスターの特徴
エレキギターの定番の一つとなっているテレキャスターには以下のような特徴があります。
①コード弾きに適したボディバランス
テレキャスターが「サイドギターやギターボーカルが使用する楽器」として、多く選ばれている理由の一つは、アコースティックギターに似たボディバランスにあります。テレキャスターは立って演奏すると水平になりがちで、リード奏者はこのバランスを苦手と感じる人もいますが、このバランスはコードストロークにおいて非常に優れており、特にアコースティックギターに慣れているプレイヤーにとっては非常に弾きやすいと感じられます。
②汎用的が高い
テレキャスターはもともとカントリーミュージックで多く使われるギターでしたが、その独特で歯切れのいい音と荒々しさがロックミュージシャンにも愛され、オルタナティブやヘヴィロックなどのジャンルでも頻繁に見られるようになりました。
また、テレキャスターはピックアップの交換や外観の変更など、プレイヤーの個性に合わせて改造しやすいモデルでもあり、そういった部分でも非常に汎用性が高いギターと言えます。
③歯切れの良いサウンド
テレキャスターはシングルコイルピックアップからなる歯切れの良いサウンドが特徴で、カッティングやリズムギターに適しています。チャキチャキとしたサウンドがバンドで重宝され、そのコシのある低音とキレのある高音が心地よい印象を与えます。こうしたサウンドは、クリーンやクランチなどで気持ちよく響きます。
④高音域の綺麗な鳴り
テレキャスターのサウンドは高音域が美しく際立っています。弦からのサウンドはブリッジ側ほど高音域がクリアになる傾向があり、テレキャスターはこの特性を活かしてセッティングされています。リアピックアップが斜めに傾いて配置され、ブリッジ側に近づくほど高音域が強調されるサウンドを生み出します。ただし、トレブルが強すぎて「キンキン」とした音になりやすいので注意が必要です。
シングルコイルピックアップの採用やフロントとリアで異なるサイズのピックアップを使用する工夫により、テレキャスターは独自の柔らかさと力強いトーンを持ち、大きな金属プレートが強い弦振動を生み出します。その音色は特にコード演奏に向いており、サイドギターやギターボーカルとして愛用されています。
テレキャスターには独自の特徴として、ボリュームポッドにハイパスフィルム(コンデンサー)というものが付いおり、ボリュームを絞った時に高音の減衰を防いで、歯切れの良いカッティングサウンドが得られるようになっています。
⑤粒立ちの良いクリアなサウンド
ボディが左右対称であるテレキャスターは、非常にバランスの良いサウンドを生み出します。その粒立ちの良いクリアな音は、音数の多いリズミカルなプレイに適しており、特にカントリー音楽でよく使用されます。音の立ち上がりが優れているため、ハンマリングオンやプリングオフなどの奏法を多用するフレーズにも適しています。
⑥ノイズが発生しやすい
基本的にはシングルコイルピックアップのため、ノイズが発生しやすい傾向があります。
⑦音の”幅”が広い
テレキャスターは非常に多様なジャンルに対応できるギターで、歪ませると太く逞しい歪みが得られるため、ロックなサウンドにも使われます。
ただし、オリジナルのシングルコイルピックアップをそのまま使用する場合、アンプや機材によっては調整が必要なこともあります。例えば、メタル系の演奏にはパワーが不足することがあるため、ピックアップの変更などの対応が必要です。
テレキャスターの構造
テレキャスターは、同じフェンダー社のストラトキャスターに比べてシンプルなデザインが特徴的です。これから説明するのはあくまでテレキャスターの基本形であり、さまざまな派生モデルが存在します。機種ごとに異なる特徴やデザインがあるため、個々に確認することをおすすめします。
ボディ
テレキャスターは左右対称で、カッタウェイがあるものの基本的に平たい形状をしています。コンター加工が施されておらず、一枚の平らな板のような外見が特徴的です。このギターはホロウボディではなく、中に空洞がないソリッドボディを採用しており、アーチトップもなく平らな板を使用しています。これにより、加工の手間が省かれ、生産性が向上し、同時にコスト削減も実現しています。木材はアッシュやアルダーなどが主流で使われています。
ピックアップ
テレキャスターには、リアとフロントに異なるピックアップが装備されています。リアには出力の高いシングルコイルが、フロントには出力の低いシングルコイルがカバーで覆われて配置されています。それぞれ専用にデザインされたテレキャスターのピックアップが搭載され、シンプルな1ボリューム、1トーン、3ウェイピックアップセレクターのコントロールが備わっています。この構成により、太く力強いサウンドやボリュームを絞ったときの明瞭なサウンドが得られ、ロック、Funk、R&Bなど様々なジャンルのギタリストに人気です。シングルコイルであるにもかかわらず、歪ませた際のサウンドはレスポールに近いくらい太く、サスティンのある特徴的なサウンドを持っています。
ネック
ロングスケールが採用されており、これにより弦のテンションを高め、硬質な音を鳴らすことができます。
ブリッジ
ブリッジは大きな金属板に取り付けられ、リアピックアップもその板の上に配置されています。この独特な構造により、リアピックアップは弦の振動を直接受け、コシのあるサウンドを生み出します。
デタッチャブルジョイントネック(ボルトオンネック)
テレキャスター登場以前のギターが主にセットネック方式(ネックとボディを接着剤で結合)を使用していたのに対し、テレキャスターはボディとネックを4本のネジで固定するデタッチャブルネック方式を採用しています。この方式により、ボディとネックを別々の生産ラインで製造でき、ネックが破損した場合でも簡単に交換できるようになりました。このネックジョイント方式は、テレキャスターを含むフェンダー社の多くのギターで使用されています。
一体化されたコントロール・ブリッジ周り
テレキャスターは、ボディに鉄の板を固定し、ボリュームノブ、トーンノブ、ピックアップセレクター、リヤピックアップ、ブリッジ、テールピースなどのコントロール系のスイッチと部品を一括して取り付ける独特の設計を採用しています。この構造により、事前に部品を製造しておけば簡単に組み立てができ、生産性向上に寄与しています。
さらに、弦を裏から通す構造により、テールピースの取り付けが不要で、弦の鳴りを確実にボディに伝達できる特徴があります。シンプルながらも扱いやすく、音作りにおいては無駄のないデザインが魅力とされています。
テレキャスターとストラトキャスターの違いは?
テレキャスターとストラトキャスターは、ともにフェンダー社が製造するエレクトリックギターであり、それぞれ独自のデザインとサウンドを持っています。テレキャスターとストラトキャスターの違いを、以下に挙げてみましょう(いわゆる一般的なテレキャスターとストラトキャスターで比較しています)。
テレキャスター | ストラトキャスター | |
ボディ | シングルカットボディ 素材はアッシュまたはアルダー材 | ダブルカットボディで、ボディがくびれている 素材はアルダー材 |
ピックアップ | 2つのシングルコイルピックアップ | 3つのシングルコイルピックアップ |
トレモロ | ハードテイル(トレモロなし) 一部のモデルにはトレモロが搭載されている | シンクロナイズド・トレモロが搭載されている |
サウンド | シャープでクリアなサウンドが特徴 カントリーやロックなどのジャンルで特に重宝される | クリーントーンからディストーションまで対応できる より幅広いサウンドバリエーションが可能 |
テレキャスターの種類
フェンダーのテレキャスターには、「スタンダード」「カスタム」「デラックス」「シンライン」という4つのシリーズがあります。
スタンダード
フェンダーのテレキャスターの代表的なモデルである「スタンダード」は、シングルコイルピックアップが2つ搭載されている基本的でオーソドックスなテレキャスターです。シングルコイルピックアップならではのジャキジャキとしたサウンドが特徴で、標準的なスタイルにはソリッドボディ、大小2基のシングルコイル・ピックアップ、3Wayセレクタ、1基ずつのボリューム、トーンが備わっています。このモデルは、フロント・リアともにシングルピックアップを搭載し、シングルピックアップ独特の硬い高音域が際立ったサウンドを提供します。ピックアップの切り替えパターンにより、リア、フロント、センター(リアとフロントのミックス)の3つの異なるサウンドが得られ、ボリュームとトーンのノブによる調整により、幅広い音作りが可能です。
テレキャスター・シンライン
1968年に登場したテレキャスター・シンラインはいわゆる「セミアコ」に分類されるタイプのギターで、内部が空洞化されており、生音が大きく、丸みを帯びたマイルドなトーンでソウルやR&Bなどのジャンルに適しています。また、シンラインにはシングル2基のモデルと、ハムバッカーが2基搭載されたモデルがあり、ワイドレンジハムバッカーはブライトで透明感のあるサウンドが特徴です。ハウリングを起こしやすいデメリットがあるものの、その独特なトーンとエアー感からギタリストたちに愛されています。
テレキャスター・カスタム
1972年に発表されたテレキャスター・カスタムは、リアにスタンダード同様のシングルピックアップを搭載し、フロントにはハムバッカーピックアップを搭載しているモデルです。通常のテレキャスターよりもリードプレイヤーに向いたサウンドを鳴らすことができます。デザインやピックアップは、ギブソンのレス・ポールにインスパイアされたもので、テレキャスター独自のジャキジャキ感とハムバッカーの太さを組み合わせたようなサウンドです。 テレキャスターの進化版といった位置付けで、より使いやすいコントロールとサウンドを提供しています。
テレキャスター・デラックス
1973年に登場したテレキャスター・デラックスは、2基のワイドレンジハムバッカーを備えたモデルで、テレキャスター・カスタムと同様にギブソンのレス・ポールの要素を取り入れた設計となっています。ボディ裏やヘッド形状はストラトキャスターからの要素を採り入れ、ヘッドの重量を増やすことでパワフルなローミッドが強調され、特にロック系ギタリストに愛されるサウンドが生まれました。LED ZEPPELINやJeff Beck Groupなどのハードロックバンドで使用され、1981年に一度製造が終了しましたが、その人気から2004年に再販されました。
初心者におすすめのテレキャスター
初心者のギタリストには「Squier(スクワイヤ)」や「Neo Classic」などがおすすめです。価格が手頃な「Squier」は3万円台で手に入り、初心者にも手軽に購入できます。一方で、「Neo Classic」は品質が高く、8万円台で手に入るコスパの良いモデルとして人気です。ここではおすすめのモデルをいくつか紹介していきます。
SQUIER Affinity Series Telecaster
これからギターを始める方には、まずスクワイヤがおすすめです。これはフェンダーの兄弟ブランドであり、フェンダーの特徴を踏襲しつつも、手ごろな価格で入手できるため、初心者にとって手に取りやすい選択肢となっています。その上で、カラッとしたテレキャスター独特の音もしっかりと楽しむことができます。
SQUIER Classic Vibe 60s Telecaster Thinline Natural
一般的なテレキャスターよりも深みのあるサウンドを持つ、シンラインモデルのテレキャスターです。シンラインモデルなので、軽量かつ取り扱いやすく、通常のテレキャスターよりも豊かな音色が特徴です。特有の響きと大きな生音が際立ち、アンプを使用せずに気軽に演奏したい場合にもおすすめです。60年代のスタイルを踏襲し、ヴィンテージスタイルのブリッジ、ナロートールフレット、9.5インチラジアス指板、Cネックシェイプを備え、優れた演奏性を発揮します。
FUJIGEN NTE100RAL
フジゲンの「Neo Classic」シリーズは、コスパの良い高品質なテレキャスタータイプを求める方におすすめです。フジゲンはかつてフェンダーの日本版であるフェンダージャパンをOEM生産していた実績豊富なギターメーカーであり、その品質はフェンダーの本社からも認められていました。Neo Classicは、フジゲンの独自技術である「サークルフレッテッド」を採用し、ヘッドからネックジョイント部にかけて扇状に配置されたフレットが特徴です。このモデルは価格を抑えつつも高い品質を提供しており、初心者が最初に手にするには申し分ない楽器と言えます。
FENDER Player Telecaster MN
メキシコの工場で製造される「Player」シリーズのテレキャスターは、テレキャスターらしいシャープなサウンドが魅力のギターモデルです。アメリカ製に比べて低価格ながら高性能で、2本目のギターとしてもおすすめされるコスパの優れたモデルです。激しいオーバードライブから泣きのトーンまで自在に操れ、モダンCシェイプネック、アルニコ5シングルコイル、6連サドルなど現代的なスペックが組み合わさり、様々なスタイルに対応します。
中級者以上におすすめのテレキャスター
中級者以上向けのテレキャスターは10万円以上の価格が一般的です。予算のある初心者にもおすすめなので、気になる方はそれぞれの特徴を確認してみてください。
FENDER American Professional II Telecaster Deluxe Rose
「American Professional II」シリーズのテレキャスター・デラックスは、現代のギタリストの要求に応えるために開発されました。このモデルは、快適な弾き心地を実現したネックやV-Mod II Double Tap ピックアップを搭載し、American Professional IIシリーズのTelecaster Deluxeは、現代のギタリストの要求に応えるために開発されました。このモデルは、快適な弾き心地を実現したネックやV-Mod II Double Tap PUを搭載し、コイルスプリットも可能です。3サドル式のトップロード/ストリングスルーブリッジなどの機能性も備え、伝統を踏襲しつつモダンなスペックを随所に採用したモデルです。
FENDER MADE IN JAPAN TRADITIONAL 70S TELECASTER DELUXE
「Made in Japan Traditional」シリーズは、フェンダーの伝統的な楽器製作美学と日本の高度なクラフトマンシップを融合させたシリーズです。その中の一つであるこのモデルは、グロスフィニッシュのアッシュボディと9.5インチラジアスの”U”シェイプメイプルネックが特徴で、リアルなヴィンテージトーンを実現しています。日本のプレイヤーにも配慮され弾きやすいナット幅となっています。
まとめ
今回は長い歴史を持ちながらも、今なお人気を誇るテレキャスターについて解説しました。紹介したように、比較的安価に手に入るモデルもあるのでテレキャスター特有のサウンドを体験したい人は購入してみるのもいいと思います。楽器のサウンドによって新しい世界が開けるかもしれません。