エレキギターの弦は各メーカーから様々な種類のものが発売されています。選択肢が沢山ある一方で、特にエレキギター初心者の方は、何を基準に選べばいいのかわからないことも多いと思います。
そこで今回はエレキギター弦の太さや素材の違いによる選び方や、主なメーカーの特徴について解説していきます。弦の選び方を知れば、エレキギターがより楽しくなりますよ!
エレキギターの弦が金属で作られている理由
クラシックギター用の弦はナイロンやフロロカーボンで作られていますが、エレキギターの弦の場合はニッケルやスチールなどの金属で作られています。それはなぜなのでしょうか?その理由は下の2つです。
①ピックアップで音を拾いやすい
エレキギターがアンプから音を出すためにピックアップで音を拾う必要があります。金属製の弦であればピックアップへ効率的に振動情報を送ることができ、ギターでの繊細な演奏表現をしやすいというメリットがあります。
ピックアップの構造に関しては下の記事で解説しています。
②音が長時間持続する
金属で作られた弦はナイロン等の弦と比較して張力が高いため音が長時間持続します。そのためロングトーンを演奏しやすいというメリットがあります。
弦の選ぶ時のポイント
エレキギターの弦を選ぶ時には重要なポイントが3つあります。
①ゲージ
「ゲージ」とはギター弦の太さのことを指します。ゲージによって繊細さや重厚さが変わり、弾きやすさも変わってきます。
基本的に弦は6本1セットで販売されており、「ライトゲージ」や「ミディアムゲージ」など太さによって名前がついたセットになっている場合がほとんどですが、メーカーによって呼称が違うため、実際には「0.09-0.42」や「0.10-0.46」など、1弦と6弦の太さ(インチ表記)で呼ぶことが多いです。
太いゲージと細いゲージには以下のような特徴があります。
細いゲージ | 太いゲージ | |
音の太さ | 細い | 太い |
ギターを弾く時に必要な力 | あまり力が要らない | ある程度の力が必要 |
弦の切れやすさ | 切れやすい | 切れにくい |
ギターを弾いた感触 | 柔らかめ | 硬め |
サウンドのハリ | ハリが弱い | ハリが強い |
サスティーン | 短め | 長め |
以下で代表的なゲージのセットを紹介します!
自分にはどの太さの弦が合っているのか参考にしてみてください。
※この記事において、ゲージの名称は代表的な弦メーカー「D’Addario ダダリオ」を基準にしています。
Super Light(スーパーライトゲージ) 0.009~0.042インチ
1弦 | 0.009インチ |
2弦 | 0.011インチ |
3弦 | 0.016インチ |
4弦 | 0.024インチ |
5弦 | 0.032インチ |
6弦 | 0.042インチ |
標準的なゲージですが、弦が細いため音色はシャープで繊細になります。弦のテンションが低く、音を鳴らす時に必要な力も少なくて済むので押さえやすいのが特徴です。
ただしテンションが低い分、弦が暴れてビビりやすくなります。
音に歯切れのよさがあり、カッティング等の演奏にも向いています。ストラトキャスターなどに張られていることが多いです。
Regular Light(ライトゲージ) 0.010~0.046インチ
1弦 | 0.010インチ |
2弦 | 0.013インチ |
3弦 | 0.017インチ |
4弦 | 0.026インチ |
5弦 | 0.036インチ |
6弦 | 0.046インチ |
スーパーライトゲージよりも太いですが、こちらも標準的なゲージです。レスポールなどに貼られていることが多いです。
初心者で何を買うべきかわからないときは、とりあえずこのライトゲージから始めてみましょう。
Heavy(ヘヴィゲージ) 0.012~0.054インチ
1弦 | 0.012インチ |
2弦 | 0.016インチ |
3弦 | 0.020インチ |
4弦 | 0.032インチ |
5弦 | 0.042インチ |
6弦 | 0.054インチ |
標準よりも太いゲージです。ダウンチューニングに使われたりもします。低音が強く重厚感があるためメタル系サウンドと相性が良く、音の伸びも良いです。
ただ、弦が太くなると弦のテンションが高くなり、弦を力強く押さえなければしっかりとした音が出ません。そのため初心者や、指の力に自信がない方は演奏しにくく感じられるかもしれません。
Custom (カスタムゲージ)
各メーカーが独自のバランスで組み合わせたゲージをカスタムゲージと呼んでいます。1~3弦には細めのスーパーライトゲージを、4~6弦にはライトゲージを採用・・・といった具合です。標準的なものよりもこだわりを追求したくなったら、このカスタムゲージを使用してみるのもいいでしょう。
②巻き方
エレキギターは基本的には4~6弦が巻弦となっていますが、この巻き弦の巻き方によってもサウンドや弾き心地が変化します。
巻弦は断面形状によって3つの種類に分類することができます。
ラウンドワウンド
巻弦は中心に「芯線」というワイヤーがあり、その周りをニッケル素材などの「巻線」が巻かれて作られているのですが、この巻線の断面が丸い弦をラウンドワウンド弦と言います。
ラウンドワウンドは最もポピュラーな巻き弦で、サスティーン(音の伸び)に優れた、明るくはっきりとした音色が特徴です。
縮んだバネのように凹凸が並ぶ構造をしているため、弦を触るとザラザラしています。弦に触れると「キュッ、キュッ」というエレキギターらしいギターフィンガリングノイズが発生したりします。ピックの側面を弦に押し当ててこすり上げるピックスクラッチは、ラウンドワウンド弦だからこそできる奏法と言えます。
とくにこだわりがなければ、ラウンドワウンドを選べばよいでしょう。
フラットワウンド
ラウンドワウンド弦とは対照的に、巻線が丸くなく、板状になっていてツルツルとした表面になっている弦です。
サスティーン(音の伸び)や倍音は少ないですが、上品で温かみのあるサウンドを鳴らすことができます。こうした特徴からジャズなどのジャンルで使用されます。表面が滑らかなためフィンガリングノイズが出にくく、ピックスクラッチ等の奏法はできません。
ラウンドワウンド弦よりも弾きにくいので、上級者向けの弦と言えるでしょう。
ハーフワウンド
断面が丸いラウンドワウンド弦を巻き付けた後、表面を研磨してフラットにしている弦です。ラウンドワウンド弦の弾きやすさと、フラットワウンド弦が奏でる上品さを兼ね備えているのが特徴です。
③素材
エレキギターの弦の素材には、主に「ニッケル」「ステンレス」「コーティング」の3つがあり、素材によって弾きやすさや音色が変わってきます。
ニッケル
エレキギターの弦において最もスタンダードな素材がニッケルです。
バランスのとれたサウンドが特徴で、柔らかく演奏もしやすいです。安価かつ入手しやすいですが、ステンレス弦と比べると錆びやすく、寿命が短い傾向にあります。
弦選びで迷う場合はニッケル弦で問題ありません。
ステンレス
ステンレスはその名の通りステン(汚れ)がつきにくい素材です。このためステンレス製の弦はニッケル製のものと比べ長寿命であるものの、ニッケル弦と比べて少し高価です。
ニッケル弦より硬いため、サウンドはシャープで張りがあり、カッティング向きです。
コーティング
弦の表面をポリマーなどの素材でコーティングすることによって耐久性を追求した弦です。コーティング弦として有名なものとしてElixir製の弦があります。
錆びにくく長持ちするので弦を交換する頻度が少なくて済みますが、価格は高めになります。コーティングによる若干の音抜けの悪さがあり、それが気になる人もいます。
ちなみにコーティングが施されているのは巻弦のみですが、プレーン弦にも防腐処理が施されていることが多いため、弦の劣化にばらつきが出ることはあまりありません。
弦メーカーごとの特徴
主な弦メーカーの特徴を見ていきましょう。
D’Addario ダダリオ
ダダリオは世界で初めてラウンドワウンド弦を発売したメーカーであり、エレキギター弦のスタンダードと言える定番の弦メーカーです。
太くてバランスのいいサウンドが特徴で、コーティングされていない弦の中では長寿命です。寿命を迎えるまでに音質が劣化しにくく、初心者にもおすすめできます。
ポールエンド(弦の端にあたる部分)が1弦から6弦まで色分けされており、弦の交換をしている最中にどの弦なのかがわかりやすいので、1弦を2弦にセットしてしまう・・・などのミスをしにくくなっています。
Ernieball アーニーボール
世界で初めてエレキギター専用の弦を開発したアメリカの老舗メーカーです。高性能ながら価格を抑えたエレキギター弦をリリースしており、コストパフォーマンスに優れた弦として高い評価を受けています。
特徴としては、柔らかい弦のため張った際のテンションが少し弱く、指への負担が少ないことが挙げられます。
サウンドは煌びやかな高音が特徴的で、張りたての時のサウンドは非常にブライトで美しいのですが、弦の寿命がやや短いため比較的短スパンでの交換が必要になります。
Elixir エリクサー
コーティング弦における最大手メーカーです。独自のコーティング技術により、音質の劣化や腐食を防ぎ、他社にはない使い心地の弦を販売しています。
コーティング弦であるため他のエレキギター弦と比較して高価ですが、錆に強く耐久性にも優れているので、弦交換の手間やコストを減らすことができます。
コーティング弦は音がこもりやすかったり表面が滑らかすぎて違和感があったりするなどのデメリットがありますが、そうしたデメリットを感じにくいのがエリクサーの特徴です。
弦の日常のメンテナンスはどうすればいいの?
エレキギターの弦は金属でできているため、汗や湿気によって汚れが表面について錆びが発生していきます。もちろん弦の劣化の進行を完全に止めることはできませんが、日常的に手入れを行うことによって寿命を延ばすことができます。
弦の清掃
ギターを弾いた後にクロスで弦を乾拭きして手垢や汗を除去するのが一般的なお手入れ方法です。基本的にはそれだけで十分ですが、新品の弦のような滑らかさを長期間維持したい場合はフィンガーイーズのような潤滑剤を使用するのも1つの方法です。
弦の交換
エレキギターの弦は、ある程度の日数が経過するとサビてきたり、チューニングが狂いやすくなってきます。このような症状が出始めると、弦の交換が必要です。弦の種類や素材、ギターの使用頻度によっても変わってきますが、2週間~1か月程度を目安に交換するのがおすすめです。
まとめ
今回はエレキギター弦を選ぶ時の基準について解説しました。種類も多いのですぐに理想の弦が見つかることは少ないかもしれませんが、試行錯誤し自分の音楽スタイルに合った弦を探していきましょう。