日本を代表するフュージョンギタリスト・高中正義。その唯一無二のトーンとメロディを支える、愛用のギター・アンプ・エフェクターを詳しく解説します。高中サウンドに近付きたい、取り入れたい、という方はぜひチェックしてみてください。
高中正義はどんなギタリスト?

高中正義(たかなか まさよし)は、日本を代表するフュージョン・ギタリストであり、特にメロディアスなギターサウンドと爽快な楽曲で知られています。彼のプレイスタイルや音楽性は、ロック・ジャズ・ラテン・ポップスなどさまざまな要素を取り入れたもので、日本のギターシーンに大きな影響を与えてきました。
フュージョン・ギタリストの先駆者
高中は1970年代後半から80年代にかけて、日本のフュージョンシーンを牽引しました。元々はロックバンド「サディスティック・ミカ・バンド」のギタリストとして活動していました。その後、ソロ活動に移行し、フュージョンというジャンルを日本に定着させた第一人者となります。インストゥルメンタル音楽(ボーカルなしの楽曲)で大ヒットを記録しており、代表作には「Blue Lagoon」や「Ready To Fly」などがあります。ギターがボーカルのようにメロディを奏でるので、楽曲が非常にキャッチーで、一般のリスナーでも聴きやすいポップなメロディとアレンジが魅力です。ギタリスト向けのマニアックな音楽ではなく、広い層に受け入れられる爽快な楽曲が多いです。
フュージョンとは、ジャズを基盤にロック、ファンク、R&B、ラテンなどの要素を融合させた音楽ジャンルです。1960年代後半から1970年代にかけて発展し、エレクトリック楽器やシンセサイザーを積極的に取り入れたことが特徴です。
独特なギタートーンとエフェクト使い
高中のサウンドには、エフェクターを駆使した独特のギタートーンが大きく関係しています。フェイザーを多用し、独特の揺らぎのあるサウンドや、ディレイやリバーブを活用し、広がりのある幻想的なトーンを奏でます。ワウペダルやコンプレッサーを駆使したプレイも特徴的です。
卓越したカッティングプレイ
高中はギターソロだけでなく、カッティングも非常に得意なギタリストです。特に16ビートのファンキーなリズムが得意で、ジャズやラテンのリズムを取り入れたグルーヴ感のあるプレイをします。ファンク的なカッティングとメロディアスなソロの融合を取り入れた「Tropical Night」は必聴です。
高中正義の経歴

生い立ちとデビュー
高中正義は、1953年3月28日に東京都で生まれました。幼少期から音楽に興味を持ち、高校時代にギターを手にすると、すぐにその才能を発揮。特にロックやブルースに影響を受け、独自のプレイスタイルを確立していきました。
サディスティック・ミカ・バンドでの活動
1971年、高中は伝説的なバンド「サディスティック・ミカ・バンド」に加入し、プロとしてのキャリアをスタートさせます。バンドは独特な音楽性と実力派のメンバーに支えられ、国内外で高く評価されました。特に1973年のイギリスツアーでは、海外でも注目を集め、フュージョンミュージックの基盤を築く経験を得ました。
ソロデビューと大ヒット
1976年、サディスティック・ミカ・バンド解散後にソロデビューを果たし、アルバム『SEYCHELLES』をリリース。独自のフュージョンサウンドと爽快なギタープレイが高く評価されました。1979年にはアルバム『TAKANAKA』を発表し、収録曲「BLUE LAGOON」が大ヒット。日本のフュージョン界を代表するギタリストとしての地位を確立しました。
その後の活躍と影響
80年代以降もコンスタントにアルバムをリリースし、ライブ活動を続ける中で、日本のフュージョンシーンに多大な影響を与えました。彼のサウンドは、次世代のギタリストたちに受け継がれ、多くのアーティストに影響を与えています。代表的な影響を受けたアーティストとして、野呂一生(カシオペア)や松原正樹などが挙げられます。現在も精力的に活動を続け、ライブパフォーマンスや新しい音楽制作に取り組んでいます。
高中正義の代表曲は?
高中正義の代表曲を3つご紹介します。
BLUE LAGOON
1979年にリリースされたアルバム『JOLLY JIVE』に収録されている、高中正義の代表曲です。爽やかなメロディと心地よいギターサウンドが特徴で、夏を感じさせる一曲として多くのファンに愛されています。
エピダウロスの風
1986年のライブバージョンとして知られるこの曲は、美しいメロディラインと情感豊かなギタープレイが特徴です。高中正義の音楽性を深く感じることができる名曲です。
高中正義の使用ギターは?
高中正義の使用ギターを紹介します。
Gibson Les Paul Custom

1970年代中盤~後半にかけて、ステージやレコーディングで使用していたとされています。ハムバッカー×2基の太く伸びるトーンが特徴で、サステインのあるメロディラインに向いていることから、バラードや歌心のあるリードトーンに適していました。
Gibson Les Paul Deluxe(70年代初期モデル)

高中がプロ活動初期(サディスティック・ミカ・バンドや高中バンド初期)に使用していたとされるモデル。ミニハムバッカーを搭載しており、通常のレスポールよりもやや明るめのサウンドです。スタンダード系より音抜けが良く、フュージョン寄りの音作りにもマッチしていました。
Tokai LS-200

Gibsonと並行して、国産Tokaiの上位モデルも使用。高品質なレスポールコピーとして評価されており、80年代の国内フュージョンシーンでの使用が確認されています。
Gibson Les Paul Junior

主に1970年代後半〜1980年代初頭のライブやレコーディングで使用していたという記録があります。特にP-90ピックアップの持つ独特の太くてエッジの効いたサウンドが、高中のリードプレイや荒々しさを強調する場面で活かされていました。
レインボーSG

1979年頃から使用していた、カスタムペイントのGibson SGモデル。ボディ全体にレインボーカラー(虹色)のグラデーション塗装が施された、非常にインパクトのある1本。このギターは、単なる機材というよりも高中正義のステージアイコンのような存在です。派手でありながらも洗練されたビジュアルは、彼の音楽性――明るく、軽快で、自由なフュージョンサウンド――と見事に一致しています。過去にはESPなどからレプリカモデルが限定販売されたこともあります。
EDWARDS KARMASTER

EDWARDS KARMASTERは、レスポールやSGなどの伝統的なモデルの特徴を受け継ぎつつも、高中が求めるよりモダンでパワフルなトーンを提供するために調整されています。特にリードトーンの音抜けの良さと力強い中音域が特徴です。フュージョンスタイルの曲においても十分なサステインを持ちながら、アグレッシブなプレイやスムーズなソロが求められる場面でも活躍しています。高音質を持ちながらも、手頃な価格帯で提供されているため、一般的なギタリストにも手に取りやすいモデルとして人気があります。
Fender Stratocaster

1980年代後半以降、フュージョンやポップスの要素を取り入れた楽曲において、Stratocasterのクリーントーンや鋭い高音域が活かされていました。高中が使用していたのは、1970年代〜1980年代のFender Stratocasterで、カスタム仕様やオーダーモデルも含まれています。特に「1984年頃のオーダーストラト」が有名です。ピックアップには一般的なシングルコイルピックアップを搭載しており、その特徴的な明るくてクリアな高音域が、高中のフュージョンスタイルにマッチしています。
YAMAHA SG3000

高中は、フュージョンの音楽性を活かすためにSG3000のサステインと安定感を重視し、このギターを使用していました。SG3000は、SG2000のさらに洗練されたモデルで、演奏中のトーンの持続力が素晴らしく、ライブでもその特性を活かしていました。特にハムバッカーによる太く、暖かいトーンが特徴で、高中のフュージョンサウンドにぴったりの深みのあるリードトーンが得られます。特にリードプレイにおいては、その音の伸びやエッジの効いたサウンドがフュージョンのジャズ的要素にもぴったりです。
Fender Telecaster

Telecasterは、特にクリーントーンや明快なリズムギターで知られるギターで、フュージョンやロックのジャンルでもよく使用されます。特に、彼のフュージョン音楽において、そのシャープで明るいトーンが生かされました。シングルコイルピックアップの特性を活かし、特にリズムプレイで活躍していました。ストラトキャスターよりも骨太で太い音が特徴で、ロック的な要素が強い場合にも使用されることがあります。
Moon Custom Guitar

Moonは、日本のギターメーカーであり、特にシグネチャーモデルやカスタムギターを製作することで知られています。高中正義もその代表的なギタリストの一人で、Moon Custom Guitarを愛用していました。高中の演奏スタイルに合わせてカスタマイズされたモデルで、特にフュージョンやロックの要素を取り入れた音楽にぴったりのサウンドを提供しています。
Music Man Silhouette

Music Man Silhouetteは、特にその高い演奏性と多彩な音作りの可能性で知られるギターです。高中正義は、このギターを使って、特にフュージョンやジャズロックなどの音楽スタイルにおいて、独自のサウンドを作り上げました。シングルコイルとハムバッカーのミックスが可能なため、クリーンな音色からディストーションをかけた攻撃的なサウンドまで、幅広い音域に対応できます。
PRS(Paul Reed Smith)

高中正義は、PRSギターのクオリティと多彩な音作りに魅了され、いくつかのモデルを使用しています。特に、PRSのギターはその豊かなサステインや、クリーンなトーンを得ることができるため、高中の音楽スタイルにぴったりでした。PRSギターは特にリードギターやソロパートで使用されることが多かったです。特にその厚みのあるトーンや太いサステインが、フュージョンやジャズロックの楽曲に最適でした。
YAMAHA SG-T2

YAMAHAの名機「SG」シリーズをベースにしつつ、高中のこだわりが随所に反映された特注仕様。モデル名の「T」は「Takanaka」の頭文字であり、「SG-T1」に続く2代目モデルです。高中のきらびやかで厚みのあるサウンドを再現するための専用設計が多数採用されています。生産数が限られており、現在は中古市場でしか手に入らない状況です。
高中正義の使用アンプは?
高中正義の使用アンプを紹介します。
Marshall JCM800

特に1970年代後半〜1980年代初頭のロック寄りのサウンドを展開していた時期には、Marshallのアンプをライブやレコーディングで使用していたとされています。高中さんはその時代、ハムバッカー搭載のギター(例えばYAMAHA SGやレスポール系)を使い、力強く伸びのあるリードトーンやキレのあるクランチサウンドを出すためにMarshallを選んでいたと考えられます。
Roland JC-120

Roland JC-120は長年にわたり愛用しています。これは彼のギターサウンドを語る上で欠かせない代表的なアンプです。1980年代以降、とくにクリーントーン中心のフュージョンサウンドへと移行してからのメインアンプとして使用されています。
Fender Twin Reverb

使用頻度はRoland JC-120ほど高くはないものの、特定のライブやレコーディング、あるいはスタジオセッションなどで使っていたとされるケースが確認されています。ライブでの使用より、スタジオ録音などでの使用が多いと考えられています。
Mesa/Boogie Markシリーズ

高中さんは主にパワフルなリードサウンドや、豊かな中域とサスティーンが求められる場面で、Mesa/Boogieを選んでいたと考えられます。特にMark IIシリーズは、ラリー・カールトンやサンタナなどフュージョン系ギタリストにも人気で、高中さんの音楽スタイルにも非常に合っていました。クリーンからリードまで1台で幅広いサウンドを作れるため、ライブにも対応しやすいアンプです。
高中正義の使用エフェクターは?
エフェクターは高中正義の繊細かつダイナミックなフュージョンサウンドに欠かせない存在です。下記に高中正義の使用エフェクターを紹介します。
Fractal Audio Systems FM9

2025年のインタビュー記事において「エフェクターをほとんどフラクタル・オーディオ・システムズの“FM9”(内蔵のもの)に替えた」と語っています。FM9はいわゆるギタープロセッサーと呼ばれるもので、アンプモデリング、キャビネットIR、エフェクトを高品位で一括管理できるため、ライブにも最適です。
ギタープロセッサーに関しては下記の記事で解説しています。
BOSS OD-1

1980年代初頭〜中期にかけて、リードトーンやブースター用途としてOD-1を使用していたようです。特にストラト系ギターを使っていた時期に、OD-1を使ってミッド寄りで甘いドライブサウンドを作っていたと考えられます。OD-1を使うことで中域が持ち上がり、ストラトやSGなどのシングルコイル系でも音が前に出るようになります。
BOSS SD-1

リードトーンのブースターや単体でのオーバードライブ用途として活用されていたようです。OD-1の後継機として1981年に登場したSD-1は、OD-1と同じく非対称クリッピング方式を採用しつつ、トーンコントロールが追加されたモデルです。より繊細な音作りを可能にするため、OD-1からSD-1に移行したと推定されます。
MXR Phase 90

「BLUE LAGOON」などの代表曲の浮遊感あるギターサウンドで使用していたのではないかと考えられています。フェイザー特有のサイケな揺れが、クリーントーンと非常に相性がよいエフェクターです。
BOSS CEシリーズ(コーラス)

高中の代名詞ともいえる浮遊感あるコーラスサウンドは、BOSS CEシリーズ(特にCE-1、後にはCE-2やCE-3も含む)によって作られていたと考えられています。CEシリーズのコーラスは、甘くメロウな揺れで、フェイザーとは異なるクリスタル感と滑らかさが特徴的です。
Electro-Harmonix Electric Mistress

独特なうねりが特徴のフランジャーです。フェイザーやコーラスとの組み合わせ 他のエフェクターと重ねて、高中らしい立体的なクリーンサウンドを作っていました。
BOSS DDシリーズ(ディレイ)

1980年代以降、ステージやレコーディングでBOSS DDシリーズのエフェクターを使用していたと言われています。クリーントーン+ディレイの組み合わせでステレオ感のある広がりを演出したり、ディレイを軽くかけたメロディラインやイントロでデジタルディレイ特有の残響感を演出する、といった使い方をしています。
Ibanez TS808

滑らかで中域が前に出るオーバードライブサウンドを求めて、TS808やその後継モデル(TS9など)を使用していたと思われます。JC-120などのソリッドステートアンプに使うことで、温かみと太さを加える、クリーンブースター的な目的で使用されていたり、コーラスと併用 TS808でブーストしつつ、空間系エフェクトで厚みを出す使い方をしていたようです。
高中正義が使っている弦は?

インタビューにて、DADDARIO ( ダダリオ )のEXL120+ XL Nickel Round Wound Super Light Plusを使用していると語っていたことがあります。
高中正義のギターサウンドを作るには?

ここでは、JC-120とペダルエフェクターで高中サウンドを再現するセッティングの例をご紹介します。
アンプのセッティング(Roland JC-120)
高中サウンドは「歪ませすぎない」ことが最大のポイントです。
ツマミ | セッティング |
Volume | 4〜5 |
Treble | 6 |
Middle | 5 |
Bass | 4〜5 |
Reverb | 3〜4 |
Chorus | ON(Depth 4、Speed 2) |
エフェクターのセッティング(代表例)
ペダル | 設定ポイント |
TS808 | Drive 9時、Tone 11時、Level 1時 |
CE-2 | Depth 4〜5、Rate 2 |
DD-3 | Delay Time 350ms、Feedback 3、Level 50% |
高中正義に学ぶ、エフェクターの使い方のコツ

高中のギターサウンドは、エフェクターの使い方にも独特のセンスが光ります。以下は彼の特徴的な使い方の一例です。
フェイザーを常時かけ気味に使う
特にクリーンフレーズやアルペジオでPhase 90などのフェイザーをうっすらかけておくことで、音に揺らぎと立体感を加えています。
コーラスとディレイのコンビネーション
リードトーンでは軽いディレイとコーラスを組み合わせて、艶やかなサウンドに仕上げています。タイムは短め、ミックス控えめがポイント。
ソロ時のフランジャー使用
ソロ中にスイッチを入れて一瞬だけ空間を歪ませるような使い方も。楽曲に動きを与えています。
高中正義の代表曲の音作り解説

高中正義の代表曲にみる音作りの実例を紹介します。
「BLUE LAGOON」の音作り
高中正義の代名詞ともいえるこの曲は、クリーンにフェイザーとディレイ、軽いオーバードライブを組み合わせた独特の浮遊感が魅力。ギターはストラトのリアPUを使い、JC-120やCE-1のコーラスとPhase 90で煌びやかなサウンドを演出しましょう。
「READY TO FLY」の音作り
やや歪みを強くし、Marshall系アンプのオーバードライブと空間系を組み合わせたリードトーンが特徴。ディレイタイムは短めにして音抜けを良くしつつ、メロディラインが前に出るように設定しましょう。
「AN INSATIABLE HIGH」の音作り
この曲ではフィルター系やコーラスが深めにかかっており、独特の浮遊感と艶やかさを演出。Electric Mistressなどのフィルター系エフェクトを軽めに使うことで、幻想的なサウンドを表現可能です。